東京地方裁判所 昭和43年(借チ)11号 決定
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〔判決理由〕二、(2) 次に、本件資料によれば、次のような事実が認められる。すなわち、本件土地は間口72.6米、奥行約四六米の宅地で、西側は幅員約一一米の通称自由通りに面し、北側は幅員約三米の道路、南側は幅員約3.7米の道路にそれぞれ面している。そして、右自由通りは、本件土地から北方約七〇米の地点で、幅員三〇米の幹線道路(通称玉川通り)と交叉している。右玉川通りには東京急行電鉄玉川線が通つており、自動車の交通量も多く、その両側は商店街をなし、鉄筋コンクリート造の中高層の建物が散在している。しかし、その裏側に当る本件土地附近は前記自由通りに面して小店舗が多少見られるほか、殆んど木造住宅である。そして、本件土地は都市計画上の住居地域、準防火地域、第三種容積地区に属している。
(3) したがつて、現在本件土地附近の土地の利用法として、鉄筋コンクリート建等の堅固建物の敷地としての利用が通常の利用方法で、あるとまではいえない。しかし、近い将来、前記玉川線は地下に移される計画があるので、玉川通りはこれによつて、整備されてさらに発展することが予測され、また自由通りも多少拡張される計画があるので、右玉川通りの発展につれ、その直近の位置にある本件土地附近も発展することが予測される。したがつて、本件土地につき、現在、借地権を設定する場合は、堅固建物の所有を目的とするのを相当とする状況にあると解される。そして本件土地は、従前の借地契約の目的土地の一部であるが、他の部分と離れた位置にあり、その面積、形状からいつても、独立の利用目的に供しうる宅地であり、この部分を区分して、その借地契約の目的を堅固な建物の所有を目的とするものに変更しても、その区分すること自体は、格別、相手方に不利益を与るとも解されないし、その他に、右借地契約の目的を変更するのを不相当とする事情は認められないので、本件申立は認容すべきである。
三、そこで、本件申立を認容するについての附随処分について検討する。
(1) 財産上の給付について。本件において、財産上の給付によつて調整すべき当事者双方の利害に関する主要な事情は本件借地契約を堅固な建物の所有を目的とするものに変更することによつて生ずる、申立人の有する借地権価格の上昇と相手方の有する底地価格の低下である。それは、相手方の底地価格の一部が申立人に移転して借地権価格が上昇するといつてよい。そして、それに加えて、申立人の借地権の半永久的な存続の保障による利益と相手方の存続期間の満了又は借地上建物の朽廃による借地権消滅の期待の喪失による損失が調整されるべきである。そこで、前記の相手方から申立人に移転する価格を考えるに、これは、一般には、当該土地及び近隣の状況、その価格、その他社会経済的事情と当事者間の借地関係における特有の事情に左右されるものではあるが、本件土地は商業市街地に近い平均的な住宅地であると認められるので、最近、東京都内に於て或る程度慣行的な基準となりつつある非堅固建物所有の借地権価格と堅固建物所有の借地権価格の差を基礎とし、本件においては、一応これを更地価格の一〇パーセントの価格とする。そこで、本件土地の更地価格は、鑑定委員会の意見に従い、3.3平方米当り金二五万円として、右の一〇パーセントの価格を求めると、本件土地全部(実測面積による)につき金二、五五五万円となる。しかし、申立人は、昭和三九年一〇月三一日契約更新の機会に、本件土地及び別紙目録(一)の(2)記載の土地についての権利金として、相手方に対し金一、三〇〇万円を支払つており、右権利金支払の時からまだわずかに四年を経ているのに過ぎないので、別紙目録(一)の(2)記載の土地の更地価格については鑑定委員会の意見に従い、3.3平方米当り一六万七、〇〇〇円とし、これと前記本件土地の更地価格比率に応じて、右権利金一、三〇〇万円を按分し、これに二〇(更新期間)分の一六(残存期間)を乗じて得た金額約金八八〇万円を前記二、五五五万円から差し引くこととする。よつて、財産上の給付額は金一、六七五万円とする。
(2) 賃料について。借地契約の目的を変更した後の本件借地関係継続中の当事者双方の利害は、主として、申立人の本件土地のより有効な利用による収益の増加と相手方の土地所有権が殆んど賃料徴収権としての側面しか有しなくなることである。したがつて、この利害の調整としては、申立人の増加する収益の一部を相手方に還元する趣旨で、賃料の増額を考慮すべきである。そこで、これについては、鑑定委員会の意見のうち、底地価格の収益率に基いて算定した賃料額を参考とし、本件土地については、一箇月金七万一、五〇〇円(3.3平方米当り金七〇円)とする。
(3) さらに、継続期間については、借地法第二条等の趣旨に従い、借地契約の目的の変更の効力が生じた時から三〇年とする。 (福嶋登)
目録
(一) 土地
(1) 東京都世田谷区上馬三丁目八八〇番地
宅地 二、一四二平方米(六四八坪)
同所 八八一番地一
宅地 一一八三平方米(三五八坪)
以上実測面積合計3,381.11平方米(1022.79坪)